群馬県の南西端にある「十石峠」。個人的には大好きな峠で、最推しと言ってもいいくらい。
今回は都内から自走で十石峠を越え、長野まで行くコースを紹介します。
コースの概要
- 東京都→埼玉県→群馬県→長野県と4県をまたぐロングライドコース
- 走行距離 約180km、獲得票高 約2,700m
- 全体として上り基調かつ勾配が徐々にきつくなっていきます
- 距離10km、獲得票高 約1,000mと長大で激しい上りである十石峠が最後に待ち構えています
- 終点はJR小海線 海瀬駅(長野県・佐久穂町)
深夜にスタートしたほうがいいかも
個人的に「都市部スタートのロングライド」をするときは基本的に深夜に走り出すことにしています。このコースを実際に走った際も0時30分に都内を出発しました。
夜は低ストレスですっ飛ばせる
深夜になれば都市部でも交通量は激減します。東京でさえ、というか東京がいちばん日中と夜間の交通量の落差が激しいかもしれません。
また、どこかで信号峠が終わり、快走できるようになります。今回のコースでは所沢を過ぎたあたりで飯能狭山バイパス(国道299号)に入ります。日中はけっこうな交通量ですが、夜間はほぼゼロ。快適に飛ばせるようになります。
秩父まで一気に駆け上がれる
深夜にスタートしたいもうひとつの理由が「正丸トンネル」の存在です。正丸トンネルは飯能〜秩父をつないでいて、日中には秩父へ向かうクルマ──特にトラックが多いため自転車での通行はためらわれます。でも、深夜〜早朝なら問題なく通過できます。
正丸トンネルを迂回するとなると、山伏峠か正丸峠を上ることになり、格段に時間がかかります。本コースにおいて秩父までの道程は特に重要でもないため、過疎時間に一気に抜けてしまったほうがいいかもしれません。
静かな秩父をさくっと巡り、小鹿野へ
深夜に起きて走り出すのは大変、確かにそれはそうだと自分も思います。でも、いいこともあります。
早朝の秩父を独り占め
秩父に到着するのを日の出前後に調整すると、朝日の中に佇む武甲山を拝めます。秩父も日中はクルマが多く、沿道で写真を撮れる雰囲気ではありませんが、早朝であれば撮りたい放題なのもいいです。
観光名所の秩父神社にも人影はなし。
このときは修繕が終わって色鮮やかになった社殿の彫刻をじっくりと眺められました。
武甲正宗総本店も朝日の下でいい感じ。日中だとクルマや人が写り込まないように撮るのが大変そうです。
荒川と秩父公園橋と秩父山地。一気に開放的な雰囲気になります。
小鹿野に入れば「田舎感」が出てくる
その後は小鹿野方面へ。
山々が行く手を遮るようにそびえているのが見えて心が躍ります。
沿道には石碑や灯籠、小さなお社。
高層建築と集合住宅ばかりだった都内を走っていたのはほんの数時間前。景色がめまぐるしく変化し、どんどん「首都圏の隅っこ」になっていくのは、目を楽しませてくれます。深夜発のロングライドは出るまでがしんどいですが、日常生活と非日常の落差を強く感じられて、やはり楽しいですね。
志賀坂峠を越えて群馬入り
その後、小鹿野の深奥にある志賀坂峠を上ります。
志賀坂峠は距離 約5.6km・獲得票高 約290m・平均勾配 約5%。
コンスタントな上りを楽しめる峠ですが、このコースの場合120km走ってから突入するため、相応にしんどくなります。
ピークには志賀坂トンネル。
志賀坂峠トンネルの隣には金山志賀坂林道の入口があります。まだ通行止めですが、工事が完了して舗装は綺麗になっています。開通したら、ここから中津川方面にも行ってみたいですね。
神流に下って、上野で脚を休める
志賀坂トンネルを抜ければそこは群馬県。
小鹿野とはずいぶんと景色がちがっています。山が近く、迫ってくるようです。山々の合間を神流川が流れていて、十石街道(国道299号)沿いの狭い土地に家屋が並んでいます。
十石街道を西進、上野村を目指します。ちなみに、ここまで来てもリタイアして東京に帰るのはわりと簡単。十石街道を東進していけば、高崎線に行き着きます。そこから輪行するだけです。難易度は高すぎず低すぎず、くらいではないでしょうか。
十石峠突入前に「道の駅 上野」で休憩・補給をしておきます。このライドで本当にキツいのはここからだからです。
十石峠は長く、険しい
十石峠の入口はこんな感じ。大型の青看板とコンクリートの法面からは「大物感」が漂います。国の財力でなんとか維持されてるタイプの道です。
突入してすぐのところには年代物の廃車。
法面の多くにネットがかけられています。実はこの十石峠は2019年からずっと通行止めになっていました。台風で被災し、走れるようになったのが今年の春。
巨木が枝を伸ばしてアーチを作っているところがあったりと、序盤から独特な感じを受ける景色が続きます。
変化は多く、楽しい峠ではないかと思います。周囲を眺める余裕があるうちは。
十石峠は距離 約14.5km、獲得票高 約780m、平均勾配 約5.1%。傾斜がキツくなりだす中盤以降は「いつまで続くんだこれ」感が。ただでさえ長大な峠に140km走ってから突入するので、苦行の時間はますます長く。
とはいえ、そういった苦労が報われる峠です。終盤に入ると一気に展望が良くなります。
向かい側の高い位置に稜線が見え、山々が壁となってこの地をほかと隔てているのがわかります。
関東のさいはて、それは長野の玄関口
ピークはこんな感じ。本当にあと少し進めばそこは長野県。このときは5月下旬、新緑が気持ち良い感じでしたが、展望が開けるわけでもなく、正直地味。
このコースでいちばん爽快なのは、ピークから下っていった先。
深夜に走り出し、秩父・小鹿野を経て首都圏を抜け、群馬の僻地にある十石峠をわざわざ上る。そんな酔狂に身を任せてみて良かったと思えるのは、目の前に“長野”が広がったとき。
順を追って徐々に移り変わっていく景色をじっと長めながら180kmも走ることで、「長野にたどり着いた」という感慨もひとしおに。十石峠が大好きなのは、旅情と冒険感溢れるライドを可能にしてくれる、絶妙な位置にある峠だからです。
よろしければ、一度十石峠を走ってみてください。
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