自転車で走っていると「先人の恩恵を受けまくってるなー」と思うこと多々。自転車乗りが行くのは、見知らぬ誰かが何かしらの理由で切り拓いた道です。沿道にあるものも理由があってそこにあります。相応の理由がある道ほどおもしろいと自分は思います。
そういった観点で楽しめるコースをひとつ紹介してみます。魚沼丘陵の魚沼側を通っている展望道路「魚沼スカイライン」をあえて反対側の十日町盆地を経由して走ります。
コース概要
- 難易度:★★☆☆☆(ふつう)
- 距離:★★☆☆☆(ふつう)
- 斜度:★★★☆☆(まぁ上る)
- 路面:★★★★★(極めて良好)
- 文明:★★★★☆(商店・鉄道等が充実)
- 自然:★★★☆☆(感じられる)
- 文化:★★☆☆☆(ふつう)
- 属性:地方インフラ/ヒルクライム/渓谷/スカイライン
- 起点は長岡駅。
- ヒルクライムになるのは山本山高原と清津峡〜魚沼スカイラインの2箇所。それ以外はだいたい平坦です。
- 平坦部は幹線道路で、そこそこ交通量があります。飯山線などの駅が多くあり、道中をカット/リタイアは容易。
- 山本山高原は中盤までそこそこきついですが、短いため大したことありません。
- 魚沼スカイラインの上りはきつめです。入口自体、たどり着くのが大変な位置にあり、道中も緩やかではありますが、上りです。
長岡〜小千谷:人間 vs 信濃川
長岡駅前を出発して国道17号・小千谷方面に向かいます。バイパスですが、沿道には花壇があってのどかな雰囲気。
越の大橋・妙見堰:交通と治水の要衝
信濃川に架かる「越の大橋」に立ち寄ります。何も知らずに見るとただのでかい橋ですが、役回りやその効果を知ると血が通って見えます。
越の大橋は国道17号上にあり、建設目的は基幹路線にあるボトルネックの解消(交通渋滞の緩和と、異常気象時に危険になる区間の迂回)。旧道は山沿いの隘路で、荒天時には交通規制が行われていたそうです。越の大橋で対岸にバイパスすることで旅行速度は17.8km/h→48km/hと劇的に改善したとも。
自転車道から眺めると、半端なく広い信濃川。流域では現代でも何度も大規模な水害が発生しています。越の大橋にはもうひとつ、そんな信濃川の水量コントロールという役割があります。可動堰(妙見堰)になっていて、24時間水量をコントロールしているとのこと。
燕三条駅のノボリで100周年だよとアピールされていた大河津分水も信濃川の洪水対策であり、国土交通省は「越後平野発展の礎」とまで書いているほどで、信濃川の治水は国家的に見ても重要な事項のようです。
山本山高原:信濃川の急流は電力とコシヒカリに変換
小千谷市に入ったあたりでちょうど稲刈りが行われていました。黄金色に輝く水田は、コンクリートジャングル育ちの自分にもなんかエモい。
ここでまた信濃川と交差、対岸には水力発電所(信濃川発電所)があります。先ほど紹介した越の大橋(妙見堰)は信濃川発電所の下流にあり、発電所の放水量に合わせて水量を調整したりもしてるそうです。信濃川をおいしく安全にしゃぶり尽くさんとする人間の知恵。
おもむろに信濃川発電所の裏にある坂を上ります(けっこうアレな勾配)。次の目的地はこの先にあります。途中で振り返ると、なかなかの景色。
さらに上っていくと錆びた建物がいい感じの牧場があり、木がどんどん薄くなって空が近づいてきます。
ここの展望台がすごくてですね、蛇行する信濃川と越後山脈が見渡せます。正面奥、左から会津駒ヶ岳・越後駒ヶ岳・八海山(たぶん、自信なし)。
信濃川は激しくうねり、その隣にある狭い土地も当然のように水田。
展望台から少し歩いたところからの景色。ゴールドとグリーンの美しいパッチワークができていました。左手奥にあるのは魚沼丘陵、右手奥には津南方面がうっすらと見えています。
展望台から先は未舗装路で、沿道には果樹園と蕎麦畑。このときは山々をバックに白い蕎麦の花が咲き乱れていました。
下りはグラベル、下った先は一面、黄金色。先ほど山頂で見たパッチワークのどこかです。
十日町:人間 vs 豪雪
またしても信濃川を渡り、長いコンクリートの洞門をパス。十日町盆地を国道117号で駆け抜けます。写真は撮っていませんが、民家の倉庫が軒並み積雪の重みで潰れない形状になっていました。
十日町で休憩中に謎の像を発見。十日町では大地の芸術祭というアートイベントを定期開催していて、過去そのために作られたものです。スリムな縄文土偶といった感じのこの像は「克雪人(Man Overcoming Snow)」と名づけられたアートで、頭部は十日町で出土した火焔型土器を模し、お腹のガス燈は風雪を溶かすもの。すなわちこの豪雪地帯を生き抜く人々を象徴的に表現しています。
清津峡:まるっとアート化された、奇景が見れる渓谷
ここからはまた上り。山深くなってきたところで日本三大渓谷「清津峡」の立て看板、立ち寄ります。
清津峡はもともとは登山道で巡るようになっていましたが、大規模な崩落があり、危険ということで観光用のトンネルが作られました。後に大地の芸術祭のための作品としてリニューアル、今は「Tunnel of Light」という巨大アートになっています(750mのトンネル全体を潜水艦をイメージしてアレンジしたらしい)。
ところどころに横坑が掘られていて、その先で清津峡を間近に見れます。
マグマが冷えてできた岩がさらに冷えて収縮。そうやって形成された柱状節理で清津峡は形成されています。柱状節理は秋山郷にもありましたが、清津峡のほうが遙かに大規模です。ちなみに、秋山郷は清津峡のご近所だったりします。
最奥はこんな感じで、家族連れやカップルが記念撮影するための場所になっています(ソロだとアウェー感やばい)。
魚沼スカイライン:魚沼盆地と越後山脈を眺める
清津峡を後にし、また上っていきます。カーブにあるわずかな土地にも水田、隙あらばコシヒカリです。
山深くなってきて、洞門もがっしりした長大なものに。
洞門を抜けた先ではコシヒカリが売られていました。ブレがなさすぎる。
十二峠入口〜魚沼側まで:きつめ
真の目的地に突入。魚沼スカイラインは十日町の十二峠〜南魚沼の八箇峠をつなぐ展望道路。魚沼丘陵上を走って魚沼盆地を見晴らせます。
北陸新幹線 浦佐駅に近い八箇峠のほうが圧倒的にアクセスしやすいのですが、十二峠に回り込む道中で新潟を象徴するようなスポットに立ち寄れるのもあって敢えて遠回りを選択しています。八箇峠スタートで十二峠に下ると帰りがめんどくさい、というのもありますが。
上り始めるとこんな感じ、斜度もキツいです。十二峠側ピークまでは距離4.5km・平均斜度8.5%。観光用の道路とは思えない山道です。
後ろを振り返ると、けっこう景色がすごかった。山が無限に連なっています。
そんな場所にも水田があってびびらされます。ピークが近づくにつれて斜度は増し、サイコンは10〜13%を示すように。
魚沼展望台:越後山脈の高峰が望める
魚沼盆地側に出たところで一気に景色が良くなります。魚沼丘陵と越後山脈の間にこれでもかと敷き詰められた水田。そして、その中を貫く北陸新幹線の高架。
魚沼展望台に到達、標高が920mしかないとは思えない景色です。看板の奥、手前から飯士山、武能岳、一ノ倉岳です。
越後湯沢駅まで丸見え、左手奥に見えるのは万太郎山、駅の直上の雲がかかったあたりにあるのが仙ノ倉山。山本山高原もでしたが、このあたりの展望台は視界を遮る木がなく、本当に遠くまで見通せます。
十日町展望台〜護国観音:魚沼盆地の入り組んだ地形を眺める
魚沼スカイラインはまだまだ続きますが、誰もいません。オフシーズンの夕方のスキー場はもの悲しいの一言。
木々に夕日が当たって美しい。日没が近く、雲は薄く桃色がかっていました。
十日町展望台に到達。こちらも相当な展望です。
厚い雲が出ていて、越後山脈は見渡せなくなっていましたが、魚沼盆地の入り組んだ地形が見てとれ、この地のダイナミズムはしっかりと味わえました。
護国観世音に到達、戦没者の霊を祀っているんだそうです。このときはここで通行止めになっていたため、3つめの展望台「八箇峠展望台」まではいけませんでした。ここで魚沼盆地に下ります。
その後は最寄りの上越線の駅から輪行か、越後湯沢駅まで自走かの二択。電車間隔が長く、タイミングによっては越後湯沢駅まで走ったほうが早いかもしれません(ただ、トラックがばんばん行き交う国道17号を行くことになるので、精神的にしんどいですが)。
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